コラボビジュアル
2026年1月より放送開始の
TVアニメ『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録』とTVアニメ『勇者のクズ』。
本日は、お互いの世界で“勇者”として働いている
「ザイロ・フォルバーツ」と「ヤシロ」を
とある空間に召喚。暴力的なふたりに対し、体当たり取材を決行することとした。
時間の許す限り、互いの世界観を深掘っていく――。
コラボPV
「勇者刑に処す」原作イラスト:
めふぃすと先生 お祝いイラスト
ザイロ×ヤシロ スペシャル対談
ヤシロ
……おい。なんだこりゃ。どこだここ? あんた誰だよ?
ザイロ
知るか。お前こそ誰だ? 新しい魔王現象か?
ヤシロ
ああ? 魔王? つまり……あんた、まさか勇者か?
ザイロ
たしかに俺は勇者だ。ってことはお前もか
ヤシロ
そーだよ、勇者だよ。くそ。同業かよ……なんだ? その感じだと、あんたのエーテル知覚って感じじゃないな。何がどうなってんだ
――それでは、インタビューを始めます。本日は宜しくお願い致します。
ヤシロ
うおっ。なんだ、変な声聞こえる
ザイロ
こういう魔王現象の権能か? 面倒だな……
ヤシロ
おーいっ。誰か知らんけど、いますぐここから出せ! こんな人相の悪いやつと一緒の空間にいたくねえぞ!
ザイロ
お前にだけは言われたくねえよ
――これよりいくつかの質問をさせていただきますので、率直にお答えください。
ヤシロ
あっ! 完全に無視されてる!
ザイロ
みたいだな。これ、暴れても帰れそうにねえな……
ヤシロ
うるせっ。俺は嫌だぞ。いますぐ帰る! 絶対に帰る。帰せ、この誘拐魔! そういうのは犯罪なんだぞ。おいっ、あんたも一緒に合唱しろ! これから『誘拐魔は滅びろ! いますぐ改心してここから出せ!』の歌を歌うから
ザイロ
なるほど。たったいま、ひとつだけわかったことがある。重要な情報だ
ヤシロ
おっ。なんだなんだ? あんた、まさか名探偵か?
ザイロ
度を越したアホと一緒に誘拐されちまったみたいだ。それだけが、いま把握できる限り唯一の事実だな
ヤシロ
ぶっ殺すぞ! おいっ、俺が場を和ませようとジョークを言っただけで、なんだ? あんたのその陰気な態度は? 仲良くなれそうにねえな!
ザイロ
ああ。そこだけは同感だな。俺も、お前とは仲良くなれそうにない
――まずはお互い、簡単な自己紹介からお願い致します。
ヤシロ
この変な声、喧嘩してみても無反応だな
ザイロ
無意味なことはよくわかった。仕方ねえ。とりあえず質問に答えていくか
ヤシロ
じゃ、この場のリーダーである俺からね
ザイロ
喧嘩するための小芝居をまだ続けるつもりか? それともお前の素がそれか? いいから先にやれ
ヤシロ
俺の名前はヤシロ。仕事は勇者。東京都内に住んでる。趣味はカードゲーム、特技は剣術。……こんな感じでいいか?
ザイロ
こっちの名前はザイロ・フォルバーツ。元軍人
ヤシロ
げ! 俺、公務員とか軍人とかマジで嫌いなんだけど。『元』でよかったぜ
ザイロ
いまは、仕事はない。囚人だからな。そういうのって仕事じゃねえだろ。刑罰として、懲罰勇者をやってる。趣味は詩。特技はナイフ投げ
――では、次の質問です。お二人とも勇者ということですが、お二人にとって、勇者とはどのようなものだとお考えですか?
ヤシロ
は! いまさらだな。勇者なんて、最低のクズがやる仕事だ。魔王を殺して金を稼ぐ。殺人が仕事のクソ野郎だよ。……ザイロだったか。あんたもそう思うだろ?
ザイロ
お前の言うことはよくわからんが……まあ、俺の答えも大差はない。勇者……懲罰勇者は、一人残らず大罪人だ。最低のクズには違いないな。俺もそうだ
ヤシロ
そっちはどうか知らんけど、俺たちのところの『魔王』は人間だ。ただし、手術で超能力を使えるようになった、犯罪集団の親玉が『魔王』に指定される。そいつを殺して賞金を稼ぐ。それが勇者だ
ザイロ
こっちの魔王は……『現象』だ。『魔王現象』って呼ばれてる
ヤシロ
『現象』? 台風とか地震みたいだな
ザイロ
そのくらいの規模の……とんでもない怪物だ。そいつを殺すのが勇者の役目、ってのはそっちと変わらない。ただ、俺たちは死ねない。殺されても生き返る。記憶や人格が摩耗して、自我が消えても解放されない。それが懲罰勇者で、俺たちの刑罰だ
ヤシロ
なるほど。だから刑罰で勇者ってわけか。死ねないから便利って思ったが、好きなことできねえんじゃ意味ねえな。囚人にお似合いの仕事だぜ、たしかに
ザイロ
ちっ。うるせえよ。だったら、囚人でもないのに勇者をやってるお前はなんだ?
ヤシロ
ああん? おいコラ、俺のデリケートな部分に触れたな! 俺だって好きで勇者やってるわけじゃなくて、金さえ貯まれば南の島で悠々自適に生活するプランがあるんだよ!
ザイロ
めでたい考え方をしてやがる。自分から志願して勇者やってるようなやつに、ろくなやつはいない
ヤシロ
あ? 言ってくれるじゃねえか……なんだ、やるか?
ザイロ
お前にその度胸があれば、受けてやってもいい
――喧嘩はやめてください。無意味です。
ヤシロ
それはこいつに言えよ。態度悪いのはこの懲罰勇者の方じゃないか?
ザイロ
さっきの喧嘩は小芝居だったが、お前のことはだんだん本気で不愉快になってきた
――次の質問です。勇者として、お二人には仲間がいると伺っています。どのような仲間なのでしょうか?
ヤシロ
仲間……って、同業者のことか? どいつもこいつも、ろくなやつらじゃねえよ。勇者ってのは人殺しのクズばっかりだからな
ザイロ
お前を筆頭に、か?
ヤシロ
ちょっと黙ってろ! 話が進まねえだろ。えーと……まずは見境なしに市街地を爆破する《ソルト》ジョーだろ。常識ゼロで法律のこと何も知らない《もぐり》のマルタに……ああ。他人が死ぬときの悲鳴を録音するのが趣味の、《音楽屋》イシノオもいたな……
ザイロ
愉快な仲間たちだな。そいつらこそ牢屋にぶち込んだ方がいいんじゃないか?
ヤシロ
それな。マジで。常々俺もそう思ってる……いや待て。そっちこそどうなんだ? 懲罰勇者って、刑罰っつったよな? お前の仲間こそ犯罪者ばっかりじゃねえのかよ
ザイロ
まあ……そうだよ。合ってる。犯罪者ばっかりだ
ヤシロ
ほらな! 俺たちはまだ捕まってないぜ。だから犯罪者じゃない。あんたの仲間がどんなやつらか、正直に言ってみろ
ザイロ
……泥棒、詐欺師、殺人鬼、テロリスト……反乱に麻薬密売。そんなとこだな……言ってて頭が痛くなってきた
ヤシロ
ハハハ! 勇者らしいメンバーじゃん!
ザイロ
……勇者刑ってのは死刑より重い刑罰だ。死刑囚以下のカスが揃ってることは認めるぜ
ヤシロ
それで、あんたは? 何をやったんだ。その人相からすると、相当な罪だろ?
ザイロ
そいつは言えてる。図星だよ。《女神》殺しだ。……俺は、俺の信じてる……いや。俺を信じてた《女神》を殺した
ヤシロ
へーえ……そいつはずいぶん……傑作だな! あんた、相当に笑えるぜ。勇者になる資格は十分だ。今度、俺の友達に紹介してやってもいい
ザイロ
……は! 嫌だね、遠慮させてもらう。お前の仲間もロクでもなさそうだ。聞いた感じ、カスばっかりじゃねえか
ヤシロ
せっかくの俺の好意を無視しやがって。やっぱりあんたのことは好きになれねえな
ザイロ
お前みたいなやつに好かれるのは御免だ
――一方でヤシロさん。あなたには、仲間以外にも弟子がいらっしゃるとか。そちらの方々についてもお聞かせください。
ヤシロ
弟子っつーか……金貰って剣術を教えてるだけだ。別に師弟ってわけじゃない
ザイロ
それは弟子だろうよ。弟子以外のなんなんだよ。その言いたくなさそうな感じからすると、やっぱりロクでもねえ連中なんだろ?
ヤシロ
うるっせえな……。傭兵まがいの連中に育てられた印堂、アーサー王の娘のセーラ、あとなんか……城ヶ峰って名前の、うるさくて騒がしくてやかましい珍獣
ザイロ
どんだけ騒がしいんだよ。ってか、ぜんぜん脈絡とか関連のない集団だな
ヤシロ
俺もそう思う。どいつもこいつも、あんまり関わりたくねえんだよな。カードゲームなら話は別だけど。できれば剣術の指導もやりたくない。なんか知らんけど、あいつらに剣術を教えると、いつも死ぬほど厄介なことに巻き込まれる気がするんだよな……なんでだ?
ザイロ
俺に聞くな
――交友関係についてはよくわかりました。お二人は魔王と戦う仕事をしているそうですが、どのような手段を用いて戦うのでしょうか?
ヤシロ
剣だな。魔王を殺すには、こいつが一番効率的だ。特に俺は剣術の達人だからな
ザイロ
自称・達人か。うんざりするほど見たな。そういうやつに限ってたいしたことねえんだよな
ヤシロ
あのなあ! 実際、ホントにマジで達人なんだよ! なんで疑う?
ザイロ
お前の言動が、いかにも大口を叩いてるチンピラだからだ
ヤシロ
ちっ。言ってろ! いいか、俺の剣術の腕は超一流だし、《E3》を使えばもう完全に敵なしなんだよ
ザイロ
《E3》?
ヤシロ
薬の名前だ。エーテル・エフェクト・エンハンサー。体内のエーテルを増幅して、現実濃度を希釈することで、えーと……物理定義性を……まあ、ンな説明はどうでもいいよな
ザイロ
その感じ、お前自身もよくわかってねえだろ
ヤシロ
黙って聞けねえのか、あんたは! さっきからずっと一言多いんだよ! ……とにかく、こいつを使うと身体能力がアホみたいに引き上げられて、『エーテル知覚』って呼ばれる超能力も手に入る。骨折くらいはすぐに治るようになるしな
ザイロ
へーえ。勇者らしくなかなか死ねないってわけだ
――ザイロさんも質問にお答えください。どのようにして魔王と戦っていますか?
ヤシロ
そうだぞ。人の手の内ばっかり探りやがって。あんたもさっさと答えろ!
ザイロ
わかってる。……俺の得物は、ナイフだ。投げナイフなら世界で一番上手い
ヤシロ
ほら出たぞ、自称・世界一が! いやー、他人から聞く『自称・世界一』はホントおめでたいな! 録音していいか?
ザイロ
くそ。絶対に言うと思ったぜ……それと聖印だな
ヤシロ
待った。投げナイフ世界一のくだり、もう少し馬鹿にしていいか?
ザイロ
黙れ。……聖印は、俺たちの大陸じゃ文明の根幹技術だ。蓄光塗料で刻んだ特別な印が、熱やら稲妻やらを『召喚』する。俺の体にも刻まれてるやつだ
ヤシロ
あんたらの世界の科学ってやつか? ほとんど魔法だな
ザイロ
そんなところだ。それから、あとは……《女神》がいる
ヤシロ
大きく出たな。神様か。俺は嫌いだね、当てにならねえし、見たことねえし
ザイロ
俺は信じてる。見たこともあるし、一緒に戦ってる……話が逸れたな。こっちの世界の《女神》は、色々なものを召喚する。異世界の兵器だとか、英雄だとかをな。俺が契約した《女神》は、剣の《女神》テオリッタだ
ヤシロ
あんたも契約してるのか……いや、待てよ。《女神》殺しのあんたが?
ザイロ
ああ
ヤシロ
あんたは《女神》を殺したから、勇者刑になったんだよな?
ザイロ
ああ
ヤシロ
じゃあ……なんで?
ザイロ
色々あったんだよ
ヤシロ
こいつ、大雑把すぎる。周りのやつが苦労してるだろうな……
ザイロ
説明するとアホくさいし、面倒くさいんだよ……そう言えば、お前がホントに剣の達人なら、テオリッタは喜ぶかもな。俺は正直、剣術はあんまり上手じゃない。もう少し使えるやつが部隊にいたら役に立ちそうだ。入るか?
ヤシロ
ここまでのあんたの説明聞いておきながら、『入ります宜しくお願いします』ってやつがいたら顔を見てみたいもんだな
ザイロ
一人だけいる。顔を見ても腹立つだけだぞ
――次の質問です。お二人が勇者として戦うにあたって、どのようなトレーニングをされていますか?
ヤシロ
ンなもん……色々だよ。筋トレに有酸素運動、あと剣術。技術ってのは、使ってないと鈍るからな。面倒だけどやるしかない
ザイロ
そこんところは、同感だ。そこんところだけはな。……ただ、ナイフ投げは一人でも練習できるんだが、格闘や剣術はな……相手がいない
ヤシロ
は! 悩みだけは一人前だな、あんたも。俺も剣術の練習台になる相手が少なくてな。さっき言った自称・弟子どもはまだまだ相手にならねえしな
ザイロ
訓練相手なら、お前には勇者仲間がいるって話じゃねえのか
ヤシロ
あ? あの辺の連中とせっかく顔合わせたなら、カードで遊ぶに決まってんだろ。何が悲しくて仕事のための訓練なんてしなきゃいけねえんだ。……っつーか、それを言ったら、あんただって部隊の仲間がいるだろ?
ザイロ
どいつもこいつも訓練の相手としちゃ不適切すぎるんだよな。腕が立つやつは人格が終わってるし……。ツァーヴとかジェイスとかは俺が懲罰勇者だからって、本気で殺すつもりで来る。せめて、タツヤとまともに意思疎通ができればいいんだが……
ヤシロ
タツヤって、いきなり普通の名前が出てきたな
ザイロ
何千年も前から懲罰勇者やってるって噂なんだが、死にすぎて記憶も自我も残ってねえんだ。戦えって言えば、周りに動くものがなくなるまで斧を振り回すようなやつだ。歩兵としては最高なんだが、加減ができねえ
ヤシロ
ってか、それって……いや、まあ、別にいいか……
――それでは、仕事から少し離れて、プライベートについて質問します。
ヤシロ
おっ。やっと俺の得意分野だな
ザイロ
俺、懲罰勇者だから、プライベートとか存在しねえんだけど……
――お二人の休日の過ごし方や、趣味について教えてください。
ヤシロ
いい質問だな! 友達と酒飲んでメシ食って、カードゲームだ! 『七つのメダリオン』ってゲームがいま一番アツい。いや! いまじゃねえな、ずっと永遠にアツい。……ま、たまにはダーツとかビリヤードとかもやるけど、基本はカードだな
ザイロ
そうかよ。いい身分の生活してやがる
ヤシロ
ハハハ! 羨ましいか。ビールとピザとカードゲーム! これ以上に大事なことがどこにある? まさに善なる世界ってやつだな
ザイロ
カードゲームって、そんな楽しいのか? 俺にはよくわからんが……
ヤシロ
超楽しい。お前も始めてもいいぞ。そしたらボコボコにしてマウントとってやるから。人殺しの腕で勝ってもなんの自慢にもならねえが、カードで勝てばいくら自慢してもいいからな
ザイロ
マウントとるのが目的になってんじゃねえか。性格悪いな、こいつ……
ヤシロ
なんとでも言え。俺はそのうち勇者なんて仕事から足を洗って、プロのカードゲーマーとして世界に羽ばたく予定なんだ
――ザイロさんはたしかにプライベートが存在しないようですが、趣味をお持ちだと聞いています。
ザイロ
ああ……詩だよ。詩が好きなんだ。読むのも作るのもな
ヤシロ
えっ。なに? 詩? 相手の息の根を止める方の『死』じゃなくて?
ザイロ
その手のクソつまんねえ冗談を言ってきたやつはお前で五人目だ。別にいいだろ。俺が詩を好きだって、何か問題あんのか? ああ?
ヤシロ
おおー、こわっ。へへへへ! とても詩が得意そうなツラには見えねえな
ザイロ
ほっとけ。それでも好きなんだよ。いまとなっちゃ、他に趣味らしい趣味なんてできねえからな……。懲罰勇者になる前は、狩りもよくやってたんだが、いまは無理だ。あとは楽器、鍛冶の真似事……色々やったな。あとは親父殿の影響で、生物観察とか
ヤシロ
けっ。なんか、いいとこの坊ちゃんって感じがするな。気に入らねえ。勇者なんかをやってるってことで、いまのくだりで喧嘩は売らないでおいてやるよ
ザイロ
お前、ことあるごとに恩着せようとしてくるな……
――続いて、お二人が嫌いなもの、苦手なものについて教えてください。
ヤシロ
なあ。こいつ、俺たちの弱点を探ろうとしてねえか?
ザイロ
かもな。俺の弱点なんて知ってどうするんだって感じだが
ヤシロ
あんたは別にいいかもしれねえけど、俺はいずれ『七つのメダリオン』でチャンピオンになる男だぜ。苦手なデッキとか分析するつもりなのかもしれねえじゃん
ザイロ
とんだ誇大妄想だな……まあいい。俺が苦手なのは騒がしいやつ。うちの《女神》様のことも最初は苦手だったよ。あとは『肉麩』。行軍食料だ、クソまずいんだよ
ヤシロ
は! 真面目でつまんねえやつだな。俺はビールとピザが怖いね! あー、いま目の前にビールとピザがあったら泣いて命乞いしちゃうなー!
ザイロ
俺が真面目でつまんねえなら、お前は不真面目なうえにつまんねえな。正直に言え。そうじゃねえと解放されないかもしれないだろ
ヤシロ
かもな。だんだん、この状況にも腹が立ってきたけど……俺が嫌いなのは人殺しだね
ザイロ
自己評価が高いのか低いのかはっきりしろ。自分の仕事も否定してんだろ、それは
ヤシロ
そりゃあ人殺しの中じゃ、俺はトップクラスだよ。超一流だ。負ける気がしねえ。だが、それがなんだってんだ? 『俺は人殺しの天才だ』って、世の中に大声で宣伝できるか? 俺は恥ずかしくて無理だね
ザイロ
ンなもん知るかよ。ただ……人殺しの技術だって、俺は意味のないことだと思ってない。世の中には悪いやつもいる。戦うしかない状況もある。そういうときに、戦えないやつを守る仕事は、誰かがやらなきゃならないもんだろ
ヤシロ
あんた、つくづく悲観的なやつだな
ザイロ
軍人だったからな。その程度の初歩的なことは誰でも考える。なんなら、もう少し説教臭い話もしてやろうか?
ヤシロ
……ああ。いま、もう一つ嫌いなものが増えたぞ。説教臭いことを言うやつだ。同業者にはいないタイプだな。ンな説教してる間に死ぬから。もしかして、あんたも勇者に向いてないんじゃねえか? やめたら?
ザイロ
やめられるもんならな
ヤシロ
あっそ! だろうな。救えねえな~
――プライベートについて、さらに深く踏み込んだ質問を行います。お二人の女性関係についてお聞かせください。たしか、ヤシロさんは複数の女性から慕われており、ザイロさんには婚約者がいらっしゃると伺っています。
ヤシロ
……なあ。お互いの精神的な健康のために、提案がある
ザイロ
奇遇だな。ちょうど、思いっきり暴力を振るいたい気分になってきたところだ
ヤシロ
おーい! 変な声に言っとくぞ。まだその質問を続けるなら、俺かこいつが絶対にお前を殺しに行くけど、どうする?
ザイロ
こいつに任せるのはなんかすげえ不安だから、俺がやる。……その質問、続けるか?
――やめておきます。では、最後の質問です。
ヤシロ
おっ! 日和ってきた。もうちょい馬鹿にして遊ぶか?
ザイロ
やめろ、刺激すんな。俺はさっさと帰りたいんだ
――お互いに、同じ勇者としてエールを送り合ってください。
ヤシロ
決めた。こいつ、あとで調べ上げて絶対に殺す。そっちの世界の関係者だったら、あんたが殺せよ
ザイロ
お前に言われなくても、そのつもりだ。それと……
ヤシロ
なんだよ
ザイロ
そう簡単に死ぬなよ。お前、俺と違って死んでも生き返れねえんだから
ヤシロ
その言葉、そっくりそのまま返すぜ。どう考えても、あんたはクソ真面目だからつまんねえ死に方しそうだ
ザイロ
忠告して損したぜ。やっぱりお前は勝手にしろ
――ここで終わりにしておいた方がよさそうです。質問にお答えいただき、まことにありがとうございました。
ヤシロ
ありがとうじゃねーんだよ。二度と呼ぶなよ
ザイロ
次はないからな